相続は誰にでも訪れる人生の節目ですが、遺言書がないことで家族間に深刻なトラブルが生じることも少なくありません。
「遺言書」という言葉は死を連想させることもあり、親を怒らせてしまった…というケースも珍しくありません。
この記事では、親に「揉めない遺言書」を書いてもらうためのポイントを、法律の専門家目線でわかりやすく解説します。
- 強制しないことの重要性
- 親に遺言書を書いてもらうにはどうすればいいか?
- 家族間のトラブルを防ぐ方法

強制しないことの重要性
強制された遺言は無効になる可能性がある
民法第960条では「遺言は本人の自由意思によって行うべき」と定められています。特定の相続人が圧力をかけて書かせた場合、遺言無効確認訴訟の対象になることがあります。
心理的な抵抗が逆効果になる
「遺言を書いておいてほしい」そう思うのは自然なことです。
大切な親が万一のとき、家族がもめることなく手続きを進められるように…という願いは、きっと多くの人に共通するものです。しかし、どれだけ心配だからといって、親に“強制する”ような形で話を進めてしまうと、逆効果になってしまうこともあります。
遺言を書くという行為は、親にとって「自分の人生の締めくくりを見つめる」ことでもあります。
人によっては気が進まないと感じたり、自分の死を連想させる話題に抵抗を覚えたりすることもあるでしょう。
そこで大切なのが、「お願い」の姿勢と“信頼関係”です。
説得するのではなく、「こんなことがあったから、私たちも準備しておきたい」と、自分の立場や不安を素直に伝えることで、親も心を開いてくれるかもしれません。
親に遺言書を書いてもらうための具体的な行動
「遺言書の作り方セミナー」に親子で参加する
「自分たちだけで話すのは気まずい…」と感じるときは、親子で一緒にセミナーへ参加するのも有効です。
最近は自治体や専門家が開催する、遺言書や相続について学べるセミナーが増えています。
第三者からの説明を聞くことで、「なるほどね」と親の受け止め方が柔らかくなり、自分ごととして捉えてもらいやすくなります。
「よかったら一緒に行ってみない?」と軽い誘い方で声をかけると、参加のハードルがぐっと下がり、きっかけ作りになります。
率直に気持ちを伝える
時には遠回しな言い方よりも、心の内を素直に話すことが、親の心を動かすきっかけになります。
「もしも何かあったとき、家族が困らないように準備してくれていたら安心なんだ」といった、自分の不安や思いをそのまま伝えることで、親も“子どものためにできること”として前向きに考えてくれるかもしれません。
大切なのは、命令でも説得でもなく、「あなたが大事だからこそ話している」という想いが伝わるように言葉を選ぶことです。
エンディングノートの活用も検討
いきなり「遺言書を」と話すのは、相手にとって重たく感じることもあります。
そんなときは、もっとカジュアルに始められる「エンディングノート」を提案してみましょう。
エンディングノートは法的効力はありませんが、「伝えておきたいこと」や「自分らしい最期の迎え方」などを自由に書き残せるノートです。
財産のことだけでなく、友人へのメッセージや医療・介護に関する希望なども記せるため、親にとっても「自分の人生を振り返り、整理するよい機会」と捉えやすいのが特徴です。
「遺言じゃなくて、ちょっとしたメモのようなものから始めてみない?」と声をかけてみると、気負わずに書き始めてもらえるかもしれません。これがきっかけになって、自然と遺言書の準備にもつながっていくことがあります。
まとめ
遺言書は、親の意思を尊重することが何よりも大切です。
強制せず、寄り添う姿勢で提案することが、結果的に家族の絆を守ることにつながります。
落ち着いた気持ちで、家族みんなが納得できる「揉めない遺言書」づくりを、親御さんと一緒に進めてみてください。
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