遺言執行者とは?権限や義務を解説します!

2019年7月1日施行の改正民法により、遺言執行者の権限が明確化(強化)されました。

本記事では【遺言執行者とはなにか】遺言執行者を初めて耳にする方にもわかりやすく解説します。

この記事を読んでわかること
  • 遺言執行者とはなにか
  • 遺言執行者の義務や権限
  • 遺言執行の大まかな流れ
目次

遺言執行者とは?

遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために動く人のことです。選任されると、遺言の内容を実現するための権限が与えられ、責務を果たすべき義務を負います。

相続人であっても遺言の執行を妨げることはできず(民法1013条1項)、妨害行為は原則として無効になります(民法1013条2項)。

また、未成年や破産者でなければ誰でも遺言執行者になることができ、個人だけでなく法人も遺言執行者になれます。

民法で、遺言執行者に関する規定が第1006条から第1020条にわたって定められています。

遺言執行者の選任方法は3つ

遺言書で指定する

遺言者は、遺言書の中で遺言執行者を指定することができます。指定された人が承諾すれば、その人が遺言執行者として職務を開始します。

遺言書で遺言執行者を指定する人を決める

遺言者は、遺言執行者の指定を第三者に委託することができます。遺言執行者を指定すべき人は、相続が開始したら速やかに遺言執行者を指定しなければなりません。

死後に家庭裁判所で選任を申立てる

遺言書に遺言執行者の指定がない場合や、指定された遺言執行者が辞退・死亡した場合は、相続人や利害関係人が家庭裁判所に遺言執行者の選任を申立てることができます。

遺言執行者を選任するメリット・デメリット

遺言執行者を選任するメリット

遺言の内容を確実に実現できる

前述のとおり遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために動く人のことです。たとえ相続人であっても遺言の執行を妨げることはできず、妨害行為は原則として無効になることから、遺産の適切な管理と分配が期待できます。

スムーズに相続手続きができる

遺言執行者に専門家を指定しておくことで、複雑な遺産相続手続きがスムーズに進めることができます。また、相続人への負担軽減となります。

遺言執行者を選任するデメリット

報酬の発生

遺言執行者として弁護士や司法書士などの専門家を選任すると、確実に遺言の内容を実行できるメリットがありますが、その分専門家への報酬が発生します。

権利の濫用リスク

遺言執行者は遺言の内容を実現するために強い権限を持っています。これを悪用して相続財産を不当に処分したり、遺言執行者が財産を市場価格よりも低い価格で売却し、特定の相続人に有利な形で分配する行為が問題となります。

遺言執行者の義務

任務の開始・通知義務

遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならず、遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければなりません。(民法1007条1項2項)

財産目録の作成・交付義務

遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければなりません。(民法1011条)

受取物の引渡し義務

遺言執行にあたって収取した果実、受け取った金銭その他の物を相続人に引き渡さなければなりません。(民法1012条3項|民法646条準用)

報告義務

遺言執行者は相続人の請求があるときは、いつでも遺言執行の状況を報告し、遺言執行が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければなりません。(民法1012条3項|民法645条準用)

補償義務

遺言執行者は、相続人に引き渡すべき金額又はその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければなりません。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負うことになります。(民法1012条3項|民法647条準用)

善良な管理者として任務を執行する義務

遺言執行者は、遺言執行の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、遺言執行事務を処理する義務を負います。(民法1012条3項|民法644条準用)

遺言執行者の権限

“遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する”(民法1012条)

具体的には、以下のようなことができます。

  • 遺言書の検認
  • 相続財産の管理
  • 財産の名義変更手続き
  • 遺贈
  • 遺産分割方法の指定
  • 寄付行為
  • 相続人の廃除・廃除の取り消し
  • 子供の認知
  • 保険金の受取人変更

遺言書に【遺贈】【相続人の排除】【廃除の取消】について記載がある場合、相続人には手続きを行えません。このような記載がある場合は遺言執行者を選任する必要があります。

また、被相続人が遺言書で子供の認知をすることがあります。(民法781条2項)。

認知とは、婚姻関係のない女性との間の子供について、自分が父親であると正式に認めるための手続きです。遺言執行者は、役所に戸籍を届け出ることになります(戸籍法64条)。

遺言執行の流れ

STEP
相続開始後、遺言執行者が承諾する

遺言執行者に選任されたとしても、就任を拒否することは可能です。遺言執行者の役割は責任が大きいため、慎重に判断することが重要です。

STEP
就任通知書を発送

遺言執行者は就任通知書を送る義務があります通知の際には遺言書の写しを添付します。

STEP
遺産および相続人の調査

亡くなった方の財産を調査し、預貯金、不動産、負債などを把握します。同時に亡くなった方の戸籍を収集し、誰が相続人となるのかを確定します。

STEP
遺産目録を作成し、相続人へ交付

調査した財産を一覧にまとめ、相続人に交付します。

STEP
遺言内容の通りに相続の手続きを行う

遺言書に記載された内容に従い、財産の分配や相続登記などの手続きを行います。

STEP
相続人全員に任務完了報告

遺言の執行が完了したら、相続人に対して報告を行い、業務が完了します。

義務を怠った場合

遺言執行者には、相続財産の管理や遺言の執行に関する重要な責任があるため、慎重に職務を遂行することが求められます。遺言執行者が義務を怠った場合、以下のような対応が取られる可能性があります。

解任

遺言執行を怠ったり、遺言執行者が不正行為を行った場合は解任の対象となります。相続人や利害関係人は家庭裁判所に対し、遺言執行者の解任申立てを行うことができます。

損害賠償請求

遺言執行者の不適切な行為によって相続人が損害を受けた場合、損害賠償請求が行われる可能性があります。

法的責任の追求

遺言執行者が故意または重大な過失によって義務を怠った場合、民事責任だけでなく、場合によっては刑事責任を問われることもあります。

まとめ

遺言執行者は、遺言者の意思を確実に実現するために重要な役割を担っています。しかし、責任が大きいため選任を承諾する際は慎重に判断しましょう。

また、2019年7月1日の法改正により、遺言執行者の復任権は原則として認められるようになり、第三者へ委任することが可能です。

当事務所では、遺言執行を行っております。お困りの際はお気軽にご相談ください。

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